春の夢56

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 ヒューは木偶の坊になった側の脚のブーツに指を突っ込んだ。
 激痛に歯を食いしばりながら取り出したのはコルト・ポケットだった。
「面白いものを持ってるな、お前…」
「敵ならとっくにあんたを殺してる」
 ヒューはアレクセイを睨み付ける。
 フンとほくそ笑み、アレクセイは身を屈めてドアを開け、銃を構えた。
「迷惑かけてすまないな…もうしばらく、隠れていてくれ」
 震えながらソファの影に縮こまっている住人に、アレクセイは声をかけておく。
 三人は身を屈めたまま、ドア口に近付き、開け放たれたドアから外の様子を見た。
「廊下の後と前、両方の角にいる」
 すぐアレクセイは顔を引っ込める。
「いいか、俺は窓から派手に飛び出して奴らを引き付ける。その間に、お前らは逃げろ。南側二つ目の路地の右方向角に俺の車がある。そこからボックスに連絡しろ」
「バカ言え!! てめー、殺られちまってもいいのかよ!!」
 ロジァは思わず喚いた。
 アレクセイは笑みを浮かべる。
「殺られたかないさ…頼むぞ、ヒュー!!」
「冗談じゃねー!!」
 尚も頑張るロジァに、アレクセイはいきなりキスした。
「ここでくたばっても、俺が愛してるって、これで少しは認めてくれ…」
 そう言うか言わないに、アレクセイは寝室に走り、窓からまさしく派手に外に飛びだした。
 たちまち銃弾が彼を襲う。
 同時に、廊下に這い出したヒューは影が消えているのを見て取り、ロジァの腕を掴んで走った。
「アレクセイを放って行けるかヨ!! 俺は奴の上官なんだぜ!!」
 ロジァは抗うが、ヒューはおかまいなしにロジァの腕を掴んだまま、片足を引き摺りながら走る。
 ネオンの輝きから外れた街灯だけの薄暗い路地。
 この辺りは中流の下といったところの住宅地だ。
 アレクセイは幸いにも、銃弾を何とか避けながら、ダストボックスの後に身を隠し、一人を狙い撃ちした。
 その影が倒れると、今度は別の方向から銃弾が飛んでくる。
 地面に這いつくばって、二つ目の影を狙う。
 人間の倒れる音がした。


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