だって、この先、もし、力に別れようって言われたら……。
佑人はグラスのノンアルコールワインを飲み干した。
「あれでしょ、もし、力と別れることになったら、とか考えてるんじゃない?」
「え………」
ズバリ当てられて、佑人は坂本を見つめた。
「そりゃわかるさ、佑人の考えてることなんて。もう何年かの付き合いだし?」
「何年ってほどじゃ……」
佑人は口籠る。
「そのうち別れるかもだから、家族に言わない方がいいって?」
「そんなこと思ってる、わけじゃ……」
「いかんね、そーゆー、ネガティブくんは」
坂本にはっきり言われると、佑人はムッとする。
「別れたくなんか、ないよ!」
きっぱりと佑人は口にする。
「俺は。でも、力は、わからないだろ。これまでの力のこと考えれば」
「ああ、続いても三か月とかって?」
佑人は眉を寄せる。
「それは、だって、仕方ないことだろ? 力の考えることだし、俺にはそれをどうすることもできない」
すると坂本が大きくため息を吐いた。
「あのさあ、お前ら付き合い始めてもう半年超えてない?」
「それは、そうだけど」
坂本は佑人の答えにイラついた。
「家族がとかいうけどさ、それ、逃げだろ? 家族がどう思う、とか、誰がどう思う、とか、ぜんっぜん関係ないだろ? 力がどう思う、でもない、お前がどう思うか、だろうが」
珍しくきつい言葉で坂本は佑人を睨みつけるように言った。
「もう、中学ん時のことなんか、どうでもいいんだよ。力のことだけ考えろよ。少なくとも、半年、持ったってことは、力はずっとお前のことを考えてるってことだろ?」
そう言い切った坂本を佑人はまじまじと見つめた。
「も、いいじゃん。万が一、億が一、家族に話したあとで力と別れることに仮になったとしてもだ、その時はその時、だろ? 家族なんか、心配させときゃいいんだよ」
坂本の言葉は佑人のずるさを突いているように、佑人は思えた。
そうだ、家族がどうとか、言ってても、ほんとは、自分が嫌なだけなんだ。
どうせきっと力は別れるとか、そう思っておけば、傷が深くならないだろうとか。
「そうだよね。当たって砕けろってやつ?」
「じゃなきゃ前に進めないだろ? 俺なんかいつもそうだからな」
フンっと坂本は鼻で嗤い、ワインを飲んだ。
「坂本はいつもきっちり計算して、その通りにこなしていってるじゃないか」
「この先どうなるかとか、計算したってその通りになんかなるもんか。いつも砕け散ってる」
言いながら坂本はソファにもたれかかった。
「だってさ、夏休みに免許取って、大学もきっちり合格したし」
「それこそたまたま当たって砕けなかったってだけだろ?」
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