郁磨は彼女ができたらすぐに連れてきて紹介していた。
中学で一人、高校で二人、大学に入って一人、以来どうもいないようだが、それにならって佑人も中学の時一度真奈を家に連れてきて紹介したことがあった。
だが、結果あんな事件を起こしてしまい、家族に心配をかけることになった。
それからみんなが佑人のことをどれほど気にかけてくれたか、郁磨が彼女を連れてこないのは佑人のことを心配してではないのかと勘繰ってしまうくらい。
だからもし力とつき合っていることを伝えたとして、あっけなく別れてしまうことになったりしたら、またみんなの心配の種を作ってしまう。
今まで力がつき合った相手とのことを考えると、そんなことを思わないではないのだ。
以前、坂本が言っていた、もって三カ月。
いつ、力の前に魅力的な女性が現れて佑人と終わりになっても不思議ではない気がする。
大学にはやはり、いろんな大人の女性が周りにいるに違いないし、さっき居酒屋で内田らと出くわしたように、綺麗になった昔の彼女と再会することもあるかもしれない。
愛し合っている男女だっていくらでも別れなんてある。
力が佑人に興味を無くすことなんかいくらでもあるのだ。
家族に話してから力と別れることになったら、美月や郁磨がせっかく気に入っているカフェリリィにも行きづらくなるかもしれないし、周りにまた気を遣わせることになる。
まあ、結局、俺自身が怖いだけなのかもしれないけど。
力のいろんなことを知るようになって、その分また好きになって、どんどん心は力と離れ難くなっていく気がする。
それに比例するように力がいなくなることへの怖れが大きくなる。
バスルームのドアが開く音がしたので、とりとめもなく考えてしまっていた佑人は一つため息をつき、空になったボトルを力が最近キッチンに設置した分別型ダストボックスに捨てに立った。
振り向く前に背後から抱きしめられる。
「力……」
佑人をシンクに押し付け、その首筋からキスを浴びせる力の指は熱く、佑人のTシャツの中から肌を弄る。
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