「俺こそ…力の周りにいる俺の知らない誰かのこと…勝手に妬いてたし」
途端、力は佑人を抱きしめる。
「も一回言え」
「…やだ」
「言えよ」
「…や…」
力は佑人の言葉を唇で奪い取った。
八王子の料金所が見えてくる頃には曇りがちにもかかわらず、気温はぐんぐん上がっている。
二匹と二人を乗せた初心者マーク付のボルボは、ETC専用ゲートをゆっくりと潜り抜けた。
中央道に乗ると車は案外流れている。
早めに談合坂まで行って、タローとラッキーをドッグランで遊ばせようということで、坂本たちとは談合坂SAで待ち合わせとなっていた。
スピードは一二〇キロ近かったりするのに気付かないくらい無駄のないスムースな力の運転で、約一時間ほどで談合坂近くまで来た。
「スピード、一二〇出てる!」
思わず喚いた佑人に、「安全運転の範囲だろ。プラス四〇超えてなきゃつかまりゃしねぇよ」と力はのんびり返す。
「オービスもちゃんと頭ん中入ってるし、覆面も大体わかるから心配すんな」
初心者マークのくせに、何年車に乗ってるんだというような言い方である。
バイクであちこちツーリングに行ったらしいので、確かに慣れているのかもしれないが。
「けどま、バイクに抜かれた時はつい、このやろってなぁ」
さきほど気持ちよさげに飛ばして行ったバイクを見送った力は悔しそうに言う。
その時、ハンズフリーにしている力の携帯に電話が入った。
「わり、何か色々準備手間取って、今から出る」
坂本だった。
「んだと? こっちはもうダンゴ坂だ。ぶっ飛ばしてこい!」
力が怒鳴りつけた後で、佑人は付け加えた。
「安全運転でいいよ、初心者マークで捕まるとヤバいし」
「おう!」
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