口々に勝手なことを言う三人に、さすがにもう怒りは感じないが呆れていた。
二人の女子大生のことは、その話し方から少し思い出した。
中三の時のクラスメイトで、トイレで佑人のことをクソミソに言って笑っていた。
「ねえ、渡辺くんもうちのサークル入らない?」
「ああ、そう、映研なんだ、名目上」
「何よ、名目上って、飲み会と女の子目当ては川上くんでしょ!」
「何だよ、お前らだって、T大で男見つけるとかだろ?」
そんなものか。
彼らにとっては既に昔々の出来事でしかないのだ。
というかそんなことはもう忘れているのだろう。
大抵イジメられた方は覚えていても、イジメた方は覚えていないものらしい。
「お待たせ、って、佑人、知り合い?」
戻ってきた坂本の言葉で佑人は我に返る。
「ああ、中学の時の……」
佑人の言葉を遮って、女子大生二人は今度は坂本に駆け寄った。
「あ、まさか、雑誌とかに出てません?」
「きゃあ、ウソ! ナマ、リュウセイ!?」
坂本は二人を見おろして、にっこり。
「感激だな、君らみたいな可愛い子に覚えてもらえて。俺、文一だけど、君らは? 佑人と同じ理二?」
え、と二人は一瞬固まった。
「い、いえいえ、あたしたち、ここの映研サークルで」
「大学は聖城大なんです」
聖城大女子といえば、お嬢様で有名で私学では結構もてはやされることが多い。
T大の男子学生にももちろん人気が高いのだが。
「何だ、そうなんだ」
坂本にしては女の子に珍しく見下すような言い方をして、「そろそろ行こうぜ、佑人」と促した。
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