空は遠く111

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   ACT   13
 
 
 東山の家はすぐわかった。
 既に時間は五時半を回っている。よその家を訪れるのにはふさわしくない時間かもと思いながら、佑人は玄関のチャイムを押した。
 東山が割りと甘いもの好きなのが記憶にあったので、とりあえず駅の近くのケーキ屋で買ったケーキを形ばかりの見舞いに提げてきた。
「はい、どなた?」
 女性の声はあまり機嫌がいいとは思えない。
「あの、東山くんのクラスメイトで成瀬といいます」
 やがてバタバタと音がして、ドアが開いた。
「あら、まあ」
 おそらく東山の母親だろう、佑人の頭から足の先まで目を走らせてから、少しばかりふくよかな女性がそんな声をあげた。
「こんな時間に申し訳ありません。入院のこと知らなくて、今日退院されたと聞いたので、お見舞いに伺いました」
「うちは全然かまわないわよ。どうぞ、どうぞ、入ってちょうだい」
 佑人が大きなケーキの箱を差し出すと、女性はにこにこと佑人を招きいれた。
「一義! カズ! お客様! カズ! 聞こえてんの?!」
 階段の上に向かって東山の母親は大きな声で呼んだ。
「っせぇな、聞こえてんだよ、そう何べんも呼ばなくったって、ババァ」
 そんな声が上から降ってきたかと思うと、ひょこひょこと片足をかばいながら、東山が降りてきた。
 顔にもあちこち痣ができている。
「え………、成瀬……?!」
 よほど驚いたのだろう、しばし絶句していた東山だが、「何? どうしたんだよ?」と聞き返す。

 


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