空は遠く112

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「お見舞いに来てくださったんだよ。ったく、この不良がまた何しでかしたんだか、入院なんて。ま、どうぞ、きたないとこだけど上がって。まあ、同じクラスの? お前にこんな上品なお友達がいたなんて。ほら、カズ、お見舞い下さったんだよ、お茶くらい自分で出しなよね」
 母親は捲くし立てるように言い、自分はコートを持って出かけるところのようだった。
「あ、いえ、お構いなく……」
「すみませんね、私、これから仕事なんで、出ますけど、何でもカズに言ってやって。そのうち、これの妹も帰ってくるので」
「わかったよ、とっとと行けって。成瀬、あがれよ」
 上下黒のスウェットに裸足の東山は、佑人を促した。
「階段上がって右、俺ん部屋、そだ、これ持ってって」
 東山は佑人の持ってきた特大のケーキの箱を渡した。
「あ、ああ、突然、悪いな」
 佑人は階段を上がりかけて、「お茶なんかいいよ、足、怪我してるのに」と声をかけた。
 六畳ほどの部屋はベッドと机と本棚、足元は服やらマンガ雑誌やらで埋まっていた。
 壁にはMLBのスター選手のポスター、その横ではグラビアアイドルがポーズを取っている。
「そこらへんに座れっつっても、場所ねぇか」
 両手のマグカップに紅茶を入れ、ひょこひょこと左足をかばいながら入ってきた東山は、テーピングしたその足で散らばっている服やら雑誌やらを除ける。
「ああ、その椅子に座って」
 佑人が机にケーキの箱を乗せ、その前の椅子に座ると、東山はカップをひとつ差し出して、自分はベッドに座るなり手を伸ばしてケーキの箱を開いた。
「うまそー。俺、腹減っててさ、食っていい?」
 東山は取り出したチョコレートケーキに早速かぶりついて、一ピースが大きいので有名なケーキショップのケーキをひとつ、あっという間に平らげる。
「あ、成瀬も食えよ」
「うん、ありがと……」

 


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