「ありがとって、お前が持ってきてくれたんじゃん」
笑うと人好きのするファニーフェイス、顎の辺りに髭が伸びている。
「いや、すまない、お前が怪我したのって、俺のせいだろ」
すると東山は佑人を見つめ、「いや……そうじゃねぇよ」と頭をかきむしる。
「俺がちっと油断したんだよ。三鷹のドンって店でダチと待ち合わせてたら、そこが、奴らのタマリ場でさ。間抜けなことに、学ラン着てったから、梶田ってガキがガンつけてきやがって、力とかにそいつの写真見せられてたんだけど、ぴんとこなくて、ハハ……いつもなら、んなトロいマネしやしねんだけどよ、奴ら、後ろからガツってきやがって、気がついたら、店引きずり出されて、何か、ボロ家? 連れ込まれてボコボコ」
東山にしてみれば、よほど悔しかったのだろう、空笑いに顔がゆがむ。
「ったく、ざまぁねーよな。かろうじてそのあばら家から逃げ出したんだが、目ン中血やら汗やらでどこをどう走ったのか、ちょうど遅れてきやがったダチに言って力に連絡取ってもらってよ」
はあっとため息をついて、東山はそれをごまかすようにまた一つケーキにかじりつく。
「おばさん、仕事だって? 食事どうすんだよ?」
「ああ、母親、夜勤でさ。看護師やってっから。俺と妹で交代にメシ作ってんだが、美沙のやつ、まぁだ帰ってこねぇ」
「そうなんだ。うちも似たようなもん。母がいない時は兄か俺が作ってる」
その時、階下で玄関が開く音がしたかと思うと、「ちょっと、お兄ちゃん!」という声とともに、妹らしき足音がバタバタと階段を上がってきて、いきなりバンとドアを開けた。
「あたしの紅茶、勝手に使ったでしょ! しかも蓋開いてる………」
言いかけてようやく美沙は佑人に気が付いた。
「あ、お邪魔してます」
「やだ、お客さんなら、そう言ってよ」
途端に顔を真っ赤にした美沙は、声のトーンも下げて兄を睨んだ。
兄に目元がよく似ている。
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