「……やめ……うぎゃああっ! 裏の…空き家だ……」
「裏?」
「…こ、この裏の…」
「案内しろ」
「ぎゃああああっ! わかった、わかったから……」
力は髭面の腕を掴んだまま出て行こうとして、ドア口近くの椅子に置かれた見覚えのあるリュックに気づくとそれを抱えた。
「カジ、…今、男が佐古田連れてそっち向かった! や、ちょっと強ぇ、腕折られて…」
店の奥から電話をする大きな声が、出て行く力の耳まで届いた。
「あのやろう!」
もちろん、東條の梶田らに対しての怒りは凄まじいものがあった。
だが、あのやろう、と頭にきているのは、佑人のことだ。
「あのやろう!」
力はもう一度繰り返した。
「どっちだ?!」
佐古田と呼ばれた髭面の男を引き摺るようにして店を出ると唸るように問いただした。
「……そっちだ。ブロック……塀の……空き家……」
ぎゅうぎゅう腕を締め上げられて、ようやく声を絞り出した。
力は佐古田の腹に一発拳を入れると、呻いてうずくまる男を放り出して駆け出した。
店の裏に回ると二軒目が今にも壊れそうなブロック塀でぐるりと囲まれている。
狭い道路は一方通行で、あまり車も通らないようだ。
かなり敷地面積は大きく、ところどころ崩れているブロックの間から不気味にひっそりとした雑木林の闇が垣間見えた。
その闇の向こうに一瞬眩い光を見た力は、すぐにそれが車のヘッドライトだと気づいた。
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