ACT 14
夕方からまた雪がちらついていた。
寒い年明けになりそうだと、カウンターの上にあるテレビではさきほどから天気予報士が天気図の説明を繰り返している。
「ワンちゃん猫ちゃんとご一緒に カフェ・リリィ」では、玄関ドアの前には門松、店内にもカウンターの上にはお鏡などが飾られ、すっかり正月を迎える準備は整っていた。
「練、ポカリくれ! ポカリ!」
息も荒くドアが開いて走りこんできたのは、でかい図体の男とこれまたでかい犬だ。
ソファにダイビングするように倒れこむ力の横で、タローは自分の皿に水をもらって勢いよく飲み始める。
「何度も言うようだが、うちは喫茶だ。ポカリが欲しけりゃコンビニに行け」
「ケチくせぇな、じゃ、ウーロン茶でいい、ウーロン茶!」
やがて練はウーロン茶の入ったグラスを力の前のテーブルに置くが、しっかりオーダーシートも添えてある。
力はそれを横目にちっと舌打ちしたものの、次には一気にグラスを空けた。
「今夜のパーティ、美紀ちゃん呼んだのかよ?」
窓際で参考書を手にコーヒーを飲んでいた坂本が声をかけた。
「俺とつき合うと、ヤクザに追われるぜっつったら、さよならだとよ」
「ちぇ、もったいない!」
朝から店の特等席を陣取って、坂本はそれでもただぼんやりしているわけではなく、勉強に勤しんでいる。
何でうちでやらないんだ、と迷惑顔の練に問われれば、ここが一番落ち着く、ときたものだ。
朝は十一時から夕方五時まで、有閑マダムや近所の自営業の店主、女子大生などの常連客が大抵、世話が簡単というような理由で連れている小型犬を連れてやってくる。
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