空は遠く130

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 硬く狭い闇の空間に乱暴に横たえられトランクを閉められたはずみで、深い眠りの底から少しだけ上昇したのか、得体の知れない孤独感に襲われた。
 だが手足を動かそうとしても身体が動かない。
 しばらくしてその闇の蓋が開いて、名前を呼ばれてすぐ、しっかり抱きしめられたような感覚があったが、意識はうやむやで、目が覚めてからは全ては夢だったのかもしれないと、佑人は漠然と思った。
 兄は何があったのかかいつまんで話してくれた。
 自分が考えていた範疇外のことが起きたのは事実だが、自分が勝手に動いたことで、どうやら却ってみんなに多大な迷惑をかけたのだということを理解した。
「坂本くんがお前を助け出してくれたんだ。それに山本くんも」
「坂本が………?」
 じゃああれは夢ではなく坂本だったのか……。
 いずれにせよ、「一人で背負い込んで突っ走るのはやめろ」と兄からもしっかり釘をさされ、今度ばかりは自分の考えの甘さや浅はかさを滅茶苦茶悔いた。
 三分の一ほどしか飲まなかったにせよ、仕込まれた睡眠導入剤のお陰で二、三日身体はろくでもなかった。
 精神的に落ち込んでいたこともある。
 ようやく決心して謝罪だけはしなくてはと、敷居の重い店へとやってきたのだ。
「ほんとに、申し訳ありませんでした」
 練に詫びの言葉を言うと練は笑った。
「いや、不幸中の幸いというか、この荒療治のお陰で捜査の半分は進んだみたいだから、警察も。まあ、成瀬くんは俺らに謝るより、自分ひとりだけで何かやろうとか考えずにだな………」
「身の程知らずも大概にしとけってこった!」
 練が優しくとりなそうとしてくれているその言葉を遮って、力の痛烈な台詞が容赦なく佑人の心に突き刺さる。

 


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