空は遠く132

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 佑人は必死で駅へと向かう。
「おい、待てよ! 成瀬!」
 息せき切って追いかけてきたのは坂本だった。
「ちょ、待てってば……」
 坂本に肩を掴まれて、佑人ははじかれたように顔を上げた。
 かろうじて涙は流れていない。
 こいつらに、弱みなんかみせてたまるか!
「そうだ、お前が助けてくれたんだって? 兄に聞いたよ。どうもありがとう」
「えっ……あっ……」
 力が妙な小細工をしたせいで、そういえば佑人の兄も未だに自分と山本の名前を取り違えているのだということを坂本は思い出した。
「いや、それは、だな、その………、ああ、もう、どう言ったらいいんだ!」
「心配しなくてももう二度と迷惑をかけたりしない」
 佑人は静かに言った。
「じゃあ、よいお年を」
「おい、成瀬、ちょ、待てって」
 坂本はクールに立ち去ろうとする佑人を再び捕まえた。
「お前、何か妙なこと、考えたりしてないよな?」
「妙なこと?」
「だからその……、年明けたらボストンに行っちまうだとか」
「何で? 三学期なんかに行ってどうするって?」
「あ、いや、なら、いんだが……」
 坂本は眉をひそめ、まだ何やらもやもやとしたものを胸の内に抱えたまま佑人を見送った。

 


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