空は遠く145

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「あ、あ、わかった。じゃあ、くれぐれも気をつけてね」
 一馬も佑人も半分心配そうな顔で頷いた。
 中学の時の事件では、佑人が渡辺美月の子供だということで、美月自身も育て方云々でバッシングを受けたこともあったし、何より佑人のことを思ってのことだが、中学三年で転校して以来、学校には保護者として一馬が行くようにした。
 本当は中学の卒業式も高校の入学式も美月が行きたかったのだろうことは一馬もわかっていたのだが。
 だがここにきて佑人は、そこまでして自分を守ってくれようとしている両親に申し訳ないと思うものの、力に嫌われているのだと分かってしまえば、例え昔のことが知れて誰が何を言おうが、何もかもどうでもいいような気がしてきた。
「……成瀬って、どうかした?」
 佑人はハッとして顔を上げた。
「え、何?」
 図書館で勉強していたのを失念するくらい思いに沈んでいたらしい。
「悩み事なら聞くよ?」
 上谷は佑人の顔を覗き込んだ。
「いや、そんなんじゃないから………そろそろ、帰るよ」
 立ち上がると、佑人は教科書やノートを鞄に仕舞い始めた。
「一人でやってもつまらないしな」
 そう言うと上谷も佑人と一緒に図書館を出る。
 あれから中学の時のことを話題にすることもないし、上谷との英語でのやり取りは面白いと思ったがどうしても楽しい気分にはなれなかった。
 無論、勉強なんてそんなものかもしれないが、時々、ふと力のことだけでなく、啓太や東山はまたマック辺りにいるのかな、などとバカ話をしていた頃が何やら懐かしい気がする。

 


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