山本と一緒にいたかっただけで、それこそ上谷の言ったように、どうせ落ちこぼれだろう彼らのことなどどうでもいいとさえ考えていたのは俺自身のくせに。
上谷と友達になろうとかそんなことは考えてはいない。それに、どうも上谷は得体の知れないところがある。第一、何で自分なんかに近づいてきたのだろう。それこそ周りにもっと親しげな面々がいるだろうに。
どこかで昔の佑人を知っていることが気になって、何となく一緒に動いていた。
そろそろ図書館通いもやめよう、何か適当な理由をつけて。
「今日はこれからまっすぐ帰るの?」
「あ、うん」
玄関でスニーカーに履き替えて外に出ると、ビュウっと冷たい風が顔にあたった。
日陰にはまだ雪が残っている。
「うっわ、寒いね」
上谷がトレンチコートの衿を掻き合わせた。
数歩歩いたところで、佑人は前を行くカップルに気づいて足を止める。
見覚えのあるはっきりとした顔立ちの少女が、隣の男子生徒を振り仰いで、高い声で笑った。
あの子、確か、隣のクラスの……
学ランに黒いコートを羽織った背の高い男子生徒は、ウンともすんとも言わず、ポケットに手を突っ込んで歩いている。
どれだけか見つめてきたその大きな背中を見間違えるはずもない。
「なあ、成瀬、よかったら、これからうちに来ないか?」
唐突な申し出に、佑人は上谷を見た。
「え、いや、急にお邪魔するわけにはいかないだろ」
「ああ、うちならかまわないって。たまたま母が帰ってきてて、成瀬のこと話したら、ぜひ会いたいって」
外交官の父親は現在ヨーロッパ駐在だという。
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