空は遠く149

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 通りの街路灯が灯される頃、「ワンちゃん猫ちゃんとご一緒に カフェ・リリィ」の奥のテーブルでは、英語の参考書をテーブルに伏せたまま、坂本が二種類のケーキを堪能しているところだった。
 坂本の足元にはタローが大きな図体をまるめて目を閉じている。
「どうだ? どっちがいい?」
 その坂本を腕組みをした大きなごつい、タブリエの男が見下ろしている。
「うーん、俺としてはこっち? ちょっと洋酒が効いてるっぽいやつ? ここの常連さんなら、やっぱこっちじゃん?」
 坂本の意見に、練は顎に指をあてて、うーんと唸る。
「確かに。しかしな、そろそろ新規開拓っつうか、新しい客を獲得しねぇと……」
「まあ、そうだな、こっちは、あ、可愛い! 彼氏と一緒に食べたい! ってな感じではあるな」
残りのケーキをしっかり平らげた坂本は力説する練をちょっと見上げた。
「そうだろ? そうだろ? よおし、ケーキの方はこの二種類をメインに行くとして、あとは肝心のチョコだな」
 空になったケーキ皿を持って、ブツブツ呟きながら練はカウンターに戻る。
「練、あっついお茶くれ」
 ドアが開くと同時に力がドカドカ入ってきた。
 タローはぴくっと顔を起こして、うずくまったまま尻尾を振る。
「ミルクティ、レモンティのどちらかしか熱いお茶はない」
 コートを脱いでソファに放ると、力は坂本の座る隣にドッカと腰を降ろす。
「じゃあレモン、レモンティくれ」
「何だよ、今日は若宮とどっかしけこむんじゃなかったのか? えらくいい調子だったじゃないか、もてるやつは忙しいねぇ」
 タローをぐりぐりと撫でている力を揶揄するように坂本は言った。

 


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