空は遠く152

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 勢いでつい上谷の申し出に頷いてしまった佑人は、上谷のマンションの前まで来てから少し後悔していた。
 上谷の家は北烏山二丁目にある高級マンションの最上階にあった。
 出迎えてくれたのは金髪美人の母親で、キャサリンと上谷が紹介してくれた。
 マンション近くのパティシェリーでケーキを買い、佑人が土産として持参したのだが、大げさなほど佑人を歓待してくれて、アメリカの何処に住んでいたのかとか、いつまでいたのかなど、矢継ぎ早に佑人に話しかける。
 通いの家政婦という中年の女性がお茶とケーキをリビングに運んできた。
「そういえば、どうしてうちの高校? 上谷だったら何処の私立でも入れただろ?」
 佑人はちょっと聞いてみた。
「ああ、ちょうど中学三年でこっちに戻ってきてさ、父親は学校なんか無頓着だし、すぐにヨーロッパにまた赴任しちゃって、母なんかそれこそ日本のことなんかちんぷんかんぷん。俺もあんまり学校のこととかわからなかったし、中学でも最初は浮いてた。まあ、行ければどこでもいいやって感じで」
 上谷にもそれなりに悩みごとがあったのかもしれないが、佑人は共有するつもりはない。
「成瀬こそ、何処でも行けただろ? 私立だって」
「…いや、近いし、今の学校」
「そうだね、どうせあと一年ほどで進学だからね。成瀬はT大行くの?」
「え、いや、まだちゃんと決めてないから」
 佑人は言葉を濁す。
 キャサリンが家政婦と一緒に夕食を作っているので食べていけという。あんまり一生懸命に勧められるので、佑人もそれじゃ、と頷いた。
 ニューヨーク出身というキャサリンは、大学を出て、外交官の秘書をやっている時に、上谷の父親と出会って結婚したのだと話し始めた。
 カナダのケベック在住が長く、数年前に日本に来てこのマンションを購入したが、すぐに夫と共にベルギーに行くことになり、上谷を一人ここに置いていくのが心配で時折帰ってきているのだという。

 


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