空は遠く154

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   ACT   17
 
 
 火曜日、佑人の三者面談の日がやってきた。
 担任の加藤には先週の金曜日に、母が来るとだけ伝えた。
「お、初めてだな、入学式もお父さんだけだっただろ? お母さん、仕事をしていらっしゃるのか、自営業って、どんな仕事をやってらっしゃるんだ?」
 深い意味はないのだろうが、若い加藤は案外生徒のことを細やかに見ているらしい。
「あ、えと、クリエイティブな仕事です」
「そうか、芸術家、アーティストか。絵とか彫刻とか?」
「いや、そういうんじゃないんですけど………」
 入学式のことまで覚えてるのか。
 この学校に入学して以来、成瀬という姓で父親しか関わり合わないでいたし、佑人自身が極力目立たないようにしていたこともあったのだろう、女優の渡辺美月の息子だということはほぼ隠しおおせている。
 昔のことが知れても今更どうでもいいが、本音をいえば、このままひっそりと卒業してしまえればそれにこしたことはないのだ。
 大丈夫よ、地味なスーツ着て、マスクしていくから。
 美月ははりきっていたが。
「成瀬も今日?」
 放課後、三者面談のために佑人が教室に残っていると、ドアが開いて啓太がやってきた。
「ああ、高田も?」
「うん、俺、成瀬の次みたい。お袋、ちゃんと時間にくるかなぁ」
「うちも、ちょっとおっちょこちょいだから」

 


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