「失礼しました」
「いいえ、大丈夫ですか? お仕事の方」
「ええ、すみません、大丈夫です」
「では、成瀬さん、少しお話したいことが。成瀬はここまででいいよ」
何だろう、と佑人は担任の顔を見た。
表情は変わらないから、美月のことを知らないか、あまりテレビなど見ないのだろう。それはいいのだが。
会議室を出た佑人は気になって振り返ったが、仕方なく教室に戻る。教室には啓太と母親、それにまだ力がいた。
「こんにちは。まあ、あなたが成瀬さん? うちのバカ息子がお世話になってまして」
小柄な啓太の母親はやっぱり朗らかそうだった。
「いいえ、こちらこそ」
「こんなのを入れてくれるような学校、あるかどうか。かといって、就職ったってそれこそもっと無理そうだし」
啓太の母親は諦め口調でそんなことを言う。
「何だよ、こんなのの親のくせしてよ!」
啓太が言い返したところで、前のドアが開いて美月が顔を出した。
「すみません、高田さんですか? お待たせしました」
啓太が立ち上がると、美月は、あら、と啓太とそして力を見た。
「あなたたち、高田くんと坂本くんだったわね? また、遊びにいらっしゃいね」
「はい、またぜひ」
直立して答える啓太の横で、聞き間違いじゃないよな? と佑人は力を見つめた。美月は力を見て、坂本くん、そう言ったのだ。
「佑くん、一緒に帰るでしょ?」
「ああ、うん」
力はわざとらしく顔を逸らして、窓際に立っていた。
啓太と母親が教室を出ると佑人も続いた。
どういうことだ?
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