空は遠く161

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 力が坂本を名乗ったお陰で、口裏を合わせざるを得なくなって佑人の兄に対しても山本だと名乗らざるを得なかったのだと、自分には悪気も佑人の家族を騙すつもりなどもなかったのだと、佑人に弁明するという第一目的の他に、今朝、先輩の一人から届いたメールも気になっていた。
『こないだ写真送ってきた上谷ってひょっとしてタカシとか呼ばれてるやつじゃないか? 六本木の高そうなクラブとかでたまに見かけた気がする。ガイジン? コーコーセーなんて思えないやつだろ? お前に負けず劣らず遊んでるみたいだぞ。しかも相手がモデルとかでさ』
 自分を棚に上げて人のことを糾弾するつもりはないが、雑誌社の編集部にいるその先輩によれば、あまり友達としてはおススメしないというのだ。
『あいつ、ちょっといい女と見るとひっかけて、飽きるとウサ晴らしに仲間とマワしたり平気でやるって。それにな』
 の後が特に気になった。
『あいつのターゲットって、女だけじゃないみたいで』
 まさか成瀬、やつにもう食われちまったんじゃないよな。
 中学の友達から上谷の話を聞いた時はありそうな話だくらいに考えていたが、実際に上谷のご乱行の話などを知れば、やけに生々しく思えてしまう。
 そんな坂本の焦りなど知らず、佑人は妙に落ち着いていた。
 力が名前を名乗りたくないくらい、自分を嫌っているのだと悟りの境地で、もはやこれ以上考えるのは愚の骨頂だと思ったのだ。
 今更考えても仕方がない。あともう一ヵ月ほどで、こんなあやふやな状況から開放されるのだから。
 山本のことは一切もう考えないようにしよう。
 外に目をやると、どんより灰色の雲が空を覆っていたが、何故か逆にどこか異次元にでも吸い込まれそうな不思議な深さを持っていた。

 


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