「おい、成瀬!」
昼休みも十分ほど過ぎて、教室に飛び込んできたのは坂本だった。
「何あわててんの? 坂本」
ブリックパックの牛乳のストローをくわえた啓太が息せき切って突っ立っている坂本を見上げた。
「成瀬なら、またあいつと一緒に出てったよ」
「生徒会長。俺、なーんかあいつ好かねぇんだよな」
東山が眉間に皺を作って腕組みをする。
「どこ行った?」
「さあ」
「力は?」
「若宮と出てった」
本当なら四時限目が終わってすぐこっちに来るつもりだったのだが、日直だったのをすっかり忘れていて、一緒に当番になっている女生徒に呼び止められたのだ。
どこに行った? 図書館か?
いや学校で昼休みにどうとかなんて、いくら何でもないだろうが、上谷ってヤツ、どうしてもいけすかねぇ!
とりあえず腹ごしらえをしようと売店に行くと、あらかためぼしいものは売り切れていて、残っていたサンドイッチと菓子パンと牛乳を買って、坂本は中庭でもそもそと食べ始めた。
力が何を考えているかなんて聞いたことはないが、成瀬のことを結構気にしているのはわかっている。
だが、相変わらず女をとっかえひっかえだし、若宮もバレンタインデーまでもつんかね、ほんと。
力のことなんかより、俺は、どうなんだよ。
坂本は寒い中庭で昼を食べ終えると立ち上がった。
前に、成瀬にキスしそうになったのは、身体が勝手に動いてた、ってことは、やっぱ、成瀬のことそういう意味で考えてるんだろうな、俺。
成瀬には思いっきり拒否られたけどな。
だからって、あんなヤツにやられるなんて許せねぇんだよ!
拳を固めて立ち上がった坂本はぐるりと校舎を見回した。
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