空は遠く163

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「生徒会室って手もあったか」
 どこに行ったかわからない佑人を闇雲に探しても仕方がないだろうし、ダメもとで生徒会室のある東棟へと向かった。
 東棟の二階は、生徒会室のほかは会議室や備品倉庫があるくらいであまり人通りはない。
 二階への階段を上がって廊下を見回すと、ちょうど生徒会室のドアが開いた。
 わ、成瀬! ビンゴ!
 思わず階段へ引き返した坂本は二人から身を隠した。
 聞こえてきたのは案の定英語である。
 上谷だ。
 金曜日の夜、バレンタインパーティに行かないか、だと?
 こそっと壁の影から覗くと、佑人は立ち止まってそれを断っていた。
「成瀬は断れないよ。中学の時のこと周りに知られるのいやだろ?」
 今度ははっきりとした日本語が坂本の耳に届く。
 何だ? 中学の時のことって?
「そんなこと、別に構わないって言ったはずだ」
「フン、冗談だよ。だけど、たまにはパーティくらいいいだろ? 成瀬なんか一日くらい勉強さぼったってどうってことないじゃないか? せっかくのバレンタインデーだし、予定があるならいいけど」
「勉強って、そんな無理してるわけじゃない」
「じゃあ、行こうよ」
「考えておく」
 二人がこちらに来るようすを見せたので、坂本は慌てて、しかし足音をなるべくさせないように足の長さを利用して階段を駆け下りた。
「気づかれなかったよな?」
 東棟から出てから坂本はちょっと振り返った。

 


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