二人が東棟から出てくるのが見えた。
「中学って、あいつ、そういや、どこ中だっけ?」
佑人の小学校の記憶はあった。
佑人は否定したが、四年生だったか、五年生だったかの時、転校してきたはずだ。
すんげぇ可愛い子が入ってきたってんで、俺、わざわざ見に行ったんだよな。
てっきり女だと思ったら男で、しかも時々英語なんかしゃべるとかで、女は騒いでたけど、男は面白くないって。
でも俺は気になってて、そしたら六年の時、一緒のクラスになったんだ。大人しくて、割とひとりでいたな。今みたく、気が強い感じじゃなくて。
仲間に入ればいいと思ってたんだが。
そうだ、いつだっけ、あれは確か夏休み明けだったか、渋谷にみんなで繰り出すって時、何か仲間入りたそうな気がしたから、あれ? 何だっけ、そう、あいつ、力のこと呼んだんだ。
仲間に入るかってあいつに聞いたら、そん時、力のやつ、なまっちろいやつ連れて行けるかとか、そんなこと言ったんだ。
そん時のこと根に持ってて、あいつ、力のこと嫌ってるとか? まさかね、そんなガキん時のこと。
坂本の脳裏に、その頃の佑人に関する記憶が次々と流れ込んできた。
「そういえば小学校の卒業式ん時、渡辺はやっぱ私立か、とか担任が言ってて、そんで俺、渡辺はどこ行くんだって聞いた気が………うう、どこだっけ……」
ブツブツ言いながら教室に戻ってきた坂本は、隣のクラスを覗いた。
「力!」
戻ってきていた力を廊下まで引っ張ってくると、辺りを見回した。
「何だよ、一体」
「お前、成瀬、どこ中だったか、知ってるか?」
声を落として坂本は尋ねた。すると一瞬、力の目が険しくなった。
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