空は遠く165

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「さあ? 何で、んなこと聞くんだ?」
 すぐにいつもの皮肉っぽい笑みを浮かべて力は聞き返す。
 坂本はどうやら力は知っていて、だが何故か話すつもりはないという意志を見て取った。
「……いや、ならいい」
 予鈴が鳴り、佑人が教室に戻るのを視界の端に見ながら、坂本は自分の教室に戻った。
 なーにがあった、中学ん時。クッソ、力のヤツ、ひょっとしてそのことも知ってるのか? 成瀬に直に聞いても答えないだろうしな。あいつ、俺が渡辺だろうって聞いたら否定しやがったし。
 問題は、あの上谷のクソヤロウが、成瀬をそのことで脅してるってことだ。成瀬は知れたってかまわないとか言っていたが、おそらく隠したいことなんだろう。
 大体、俺じゃあるまいし、成瀬みたいな成績のええとこのおぼっちゃんがうちの高校なんかくるのがおかしいだろ? 普通。中学、私立行ったやつが。
「坂本、答えろ」
 呼ばれて坂本はハッと我にかえる。教壇では世界史の教師が睨みつけていた。授業中だってことさえ忘れていたらしい。
「え……っと、すみません、聞いてませんでした」
 教師は眉を顰めながら、「いくら試験の結果がいいたって、気を抜くな」と文句を言った。
「すみません」
 そう口にしつつも、もっと重大事があんだよ、と坂本は心の中で言い返す。
 何だっけか、俺、聞いたんだよ、絶対! 成瀬の行った学校の名前。
 坂本は授業が終わるまで悶々としていたが、休み時間になると携帯を取り出して、私立中学を検索した。
「えっと、何だっけな……」
 画面に表示された近隣の私立中学の名前をじっと睨みつけていた坂本はスクロールする手を止める。
「聖城学園……これだっけか? 武蔵小杉……」
 それは中高一貫教育の割とレベルの高い、お坊ちゃまお嬢様学校だと、坂本も耳にしたことがあった。
 


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