あ、白河女学院行った彼女って、あれか。前に、東や啓太が言ってた、マックで成瀬が女の子泣かした事件……。
それでも、佑人が目立たないよう、存在感を消しているみたいにわざとひっそりとしている理由がわかったような気がした。
自分の起こした事件で、母親が矢面に立ったのだ、成瀬はおそらくそんなことは二度と嫌だと思ったに違いない。
にしても不器用なやっちゃな……せっかく苗字も違うし、自分知らないやつらばっかなんだぜ? 高校生デビューするとかよ。
静けさを打ち破るようにドアが開いてまず大きな犬が駆け込んできた。
「練、コーヒーと何か食うもん!」
後から入ってきた力は、そう言うなりダウンジャケットを脱いで、坂本が座っている横に放った。
「なあにやってんだよ、てめ、こそこそと」
チラリと坂本のタブレットに目をやった力は険しい視線を坂本に向ける。
「別に」
坂本はタブレットを閉じると自分の鞄に入れ、少し冷めたコーヒーを飲みほした。
「成瀬に一応弁明しといたからな。お前が俺の名前を騙ったんで、仕方なく俺は口裏を合わせただけだってな」
タローに水を飲ませている力は、「何だよ、その言いぐさ」と坂本を睨む。
「事実だろ? どのみち、てめぇは成瀬に嫌われてるんだから、今更だろ」
フンとソファにふんぞり返る力は苦々しい顔をしている。
その時、何か引っかかりがあった気がしていたそれが何なのか、坂本は思い至った。
そうだ、あいつ、こう言ったんだ。
『山本は俺のこと嫌ってるから、自分の名前も名乗りたくなかったんだろ』
引っかかったのはその言い方だった。
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