金曜日は少しばかり校内がざわついていた。
その理由を佑人は靴箱を開けたひょうしに、ラッピングされた箱がバラバラと零れ落ちたのを見てようやく思い出した。
ここのところ両親もそれぞれが仕事や出張で不在だったし、昨夜は兄の郁磨も飲み会だとかで、家庭教師の柳沢が帰ってからは佑人は一人で過ごしていたから、すっかり忘れていたのだ。
「うわ、成瀬、すんげ一杯もらってんの!」
あとからきた啓太が大きな声を上げた。
「おはよう」
佑人は素直に口に出す啓太の顔を見て苦笑する。
「よう、モテるじゃん、成瀬」
東山にからかわれながら、佑人が落ちたチョコレートの箱を拾い上げてリュックに入れていると、「ちぇー、何もない。俺、靴箱開けるのドッキドキだったのに」という啓太の声が聞こえた。
「バッカじゃね? お前にくれるくらいなら、図書館の裏にいるニャンコにくれるってよ」
「なーんでぇ、お前だってねーじゃん!」
漫才コンビのように相変わらず周りからクスクス笑いを誘っているところへ、「よう」と声をかけてきたのは坂本だった。
顔を上げた佑人は坂本の後ろに力を認めて、おはよう、とさりげなく顔をそらした。
「おおっ」
バサバサバサっと靴箱を開けた坂本の足元にいくつものチョコレートの包みが落ちた。
「さっすが、俺、うちのガッコの女子はよーくわかってるよな」
うんうんと自画自賛する坂本だが、「山本さん!」という、女の子の切羽詰まった声に振り返ると、力に明らかにチョコの包みを差し出している。
公衆の面前にもかかわらず、少し頬を赤らめているものの、堂々と力を見つめているのはなかなかに美人な、タイの色からすると一年生らしい。
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