そんな力と若宮のやり取りは当然、佑人にも聞こえていた。
私というものがありながら、というところだろう。
だが、今までにも散々似たような展開はあったのを、佑人ですら知っているのだから、彼女もわかっているだろうのに、不実なやつと知りながら、どうしてそんなやつを好きになるんだろう。
いや、どうしてなんて考える前に、好きになっているんだから、しょうがないか。
あの子、あんなに一生懸命なのに。
周りに誰がいようが、山本しか見えてない。
そのうち彼女と別れて、山本は今度はあの一年生の子に乗り換えるんだろうか。
は、バカみたいだ。俺、何考えてんだろう。俺には何の関係もないのに。
佑人は我に返ったように自分を嘲笑う。
ただ、若宮の胸の痛みにまるで同調したように自分の心がキリキリと軋む音がした。
空は灰色で遠い色をしていた。
予報では雨が降るとしても夜中過ぎ、小雨程度と言っていた。
傘は持ってきたが、この分だと使わなくてもすみそうだ。
佑人は授業が終わると早々に学校を後にした。
早く一人になりたかった。
また力が若宮と仲良さそうにしているところを見るのも嫌だった。
門をくぐると、佑人の姿を見て駆け寄ってきたラッキーを撫でながら、玄関の鍵を開け、リビングから自分の部屋に向かおうとした時、携帯が鳴った。
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