「大丈夫か? 成瀬くん、気分が悪いのか?」
練にそう聞かれると、上谷に襲われた時の悍ましさが舞い戻り、実際吐き気さえ覚えた。
「……あ、はい、ちょっと……頭を冷やしたいし」
「よし、わかった」
「練、もちょっと先で停めてくれ」
力が言った。
路肩に車が停まると、ドアを開けようと焦る佑人の背後から、力が佑人を抱えるようにしてドアを開け、そのまま車を降りた。
外の風は空気がいいとは言わないまでも、その冷たさに佑人の吐き気も少しおさまった。
「悪い……もう、ほっといてくれていいから……」
「てめ、いい加減にしろよ!」
足元のおぼつかない佑人を抱えて、力が怒鳴る。
「大丈夫か?」
車の中から心配そうな声をかける練に返事もせず、力は佑人を抱えたまま歩きだした。
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