「わかりました」
力は携帯を切ると自分のポケットに突っ込み、佑人のジャケットを手に、ようやくドアに辿り着いた佑人の腕を掴んだ。
「もたついている場合か! バカやろ!」
スニーカーを履くのももどかしげな佑人を引きずるようにしてエレベーターに乗せ、力は佑人の肩をしっかと引き寄せる。
佑人が震えているのが力にもわかって、力は佑人を支える腕に力を入れた。
「……俺のせいだ……ラッキー……ちゃんと門を閉めたか確認もせずに……ついてきたがったのに、俺が出かけたりしなければ……ラッキー…」
涙が止まらない。自分を責める後悔ばかりが佑人の口をついて出る。
力はそんな佑人の腕を引いてマンションの外に出ると辺りを見回した。
運よく客を降ろしているタクシーを見つけると、佑人を連れて走り寄り、タクシーのウインドウを平手で叩いた。
ドアが開くなり、力は佑人を座席に押し込むようにして自分も乗り込むと、河喜多動物病院を告げた。
「というと駅向うの?」
明らかにあまり歓迎しない口ぶりだ。
おそらく病院まではワンメーターほどなのだと気付いた力は鼻で笑い、ポケットからくしゃくしゃになった一万円札を取り出すと、運転手に突き付けた。
「わりぃな、急いでるんで、釣りはいらねぇから」
五分も走ったろうか、それでも信号にかかったりするのをイラつきながら、力は茫然自失状態の佑人の肩を抱いた。
病院の入口は薄暗かったが、奥に明かりが見えた。
二人が駆け込むと待合室にいた郁磨が立ち上がった。
「郁ちゃん……ラッキー! ラッキーは?」
佑人が涙目で郁磨に問いかけると、郁磨は佑人を抱きしめた。
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