空は遠く186

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 研究室の皆と飲むから午前様だろうと言っていたが、もう帰ってきて、佑人がいないので心配してかけてきたのだろうと思いながら電話に出ると、「佑人! 今、どこにいる?」という郁磨の声が緊張している。
「あ、ごめん。ちょっと友達のうちにいて」
「すぐ、帰ってこい!」
「どうしたの?」
 嫌な予感がした。
「ラッキーが………」
「ラッキー?」
 そのあとの郁磨の言葉は聞こえていたはずが、佑人の頭は理解しようとしていなかった。立ち上がった佑人は転げるようにドアに向かう。
「おい、成瀬?!」
 高校生が一人で暮らすには贅沢なこの部屋は、ワンルームだが二十畳ほどもあり、もたつくようにドアへと向かう佑人が転びそうになるのを、力は後ろから慌てて抱えた。
 タローも心配そうな顔でクーンと啼いた。
「何だ? どうしたってんだよ!」
「行かなけりゃ…ラッキー!!」
 その時力は佑人が握っている携帯から声が聞こえるのに気がついて取り上げた。
「もしもし! ラッキーがどうかしたんですか?!」
「君は確か、坂本くんだったか? 佑人がまともに話を聞いていないようだから伝えてくれ。ラッキーが事故にあって、今、手術中だ」
「手術?! 病院は?」
「河喜多動物病院だ」

 


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