「なるほど。いずれにしてもありがとう。一度佑人を呼び出したけど出なかったから、検査をして状況がわかってからの方がいいかと思って、手術に入ってから連絡したんだ」
郁磨はドアを隔てた向うにいる佑人とラッキーを見ているようだった。
「俺は楽観的なんだけどね、佑人は状況に同調しがちだから」
そう言いながらも郁磨が色々と力に話をしたのは、ラッキーと佑人をひどく心配して、話をしないではいられなかったのではないかと、力はいかにも聡明そうな郁磨の表情を見つめた。
ポケットで携帯が鳴った。
力は待合室から外に出た。
「お前か。何だよ」
たったさっき話題に上がったのが通じたかのように相手は坂本だった。
「何だかじゃねぇよ、成瀬、ちゃんと送り届けたんだろうな?」
「それどこじゃねんだよ、こっちは! 取り込み中だ、切るぞ」
「おい、取り込み中って、何だよ、お前、まさか!!!!!」
坂本が怒鳴りつけた。
「でけぇ声出すな! ラッキーが一大事なんだ。切るぞ!」
「おい………」
坂本がまだ何か言っているのをさっさと切ると、力は待合室に戻る。
「山本くん、こんな時間までつきあわせて悪かったね、家の方が心配しているだろう、お礼はまたあらためてさせてもらうよ」
「いや、俺……」
一人暮らしだから、と言おうとして、郁磨の言外にお前は帰れと言われているのかもしれないと勘ぐった力は言葉を飲み込んだ。
「それじゃ、お大事に」
踵を返して力は病院を出る。
暗い空から小雨が降りだしていた。
力は闇の中へと駈け出した。
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