空は遠く192

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 昼近くになっても夜半から降り出した雨はまだやみそうになかった。
「この雨じゃ、客足、まばらって感じっすよねぇ」
 ドアの近くに傘立てを置き、マサがモップを持ったまま外を見やった。
 土曜日のこの時間、いつもなら常連さんに週末のみの常連客も混じって「ワンちゃん猫ちゃんとご一緒に カフェ・リリィ」の稼ぎ時なのだが。
 ワンちゃん猫ちゃんとはあるものの、大抵はトイプードルや豆柴、ミニチュアダックスやチワワなどの小型犬をファッションアイテムのように抱いた女性客が多いのだが、大型犬では割と珍しいゴールデンドゥードル連れの夫婦や、たまに散歩に慣れたペルシャ連れの有閑マダムなども立ち寄ったりする。
 店長の練やオーナーの百合江がいると長居する客がほとんどだが、中には躾の行き届いたボーダーコリーを足元に、静かに本を読んでいったりする若い女性客もいる。
「タローや力が陣取ってるから、雨も止まないんじゃないのか?」
「何だよ、それ」
 奥のソファにふんぞり返っている力が、カウンターの中の練を睨みつけた。
「夕べ、ちゃんと成瀬くん、送り届けたのか?」
 練に問われて、力はたちまち苦々しい顔になる。
 気になっていたので今朝方河喜多動物病院に寄ってみたのだが、ラッキーは意識を取り戻し、ようやく成瀬兄弟も帰ったのだという話だった。
「一週間くらいしたら少しずつ動かすようにして、入院はまあ、二週間ってとこだな。思い切り走り回れるようになるには半年はかかるだろう」
 タローの兄弟だけあって、あの子は丈夫だな、と容態を尋ねた力に老医師は言った。

 


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