空は遠く190

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 郁磨が語る佑人は力にとって想定外だった。
「俺は結構世の中うまく渡っていくタイプなんだけど、佑人ってちょっと真っ直ぐ過ぎてね、こっち、日本に戻ってきてから周りに馴染めなくて心配していたんだ。ようやく馴染めたかなと思うと、中学の時も何か色々あってね。家族にも心を閉ざしてしまったりで、佑人にとってはラッキーだけがずっと心を許せる相手なんだ」
 小学校のあの夏休み明け、おずおずと自分に声をかけてきた佑人のことを、力ははっきり覚えていた。
 それなのにあの時、つい裏腹な言葉を口にしてしまっていた、そのことも。
「今日は飲み会を予定していた教授が風邪でダウンして日を改めることになって、早々にうちに帰ったんだ。そしたらラッキーが蹲っててね。慌てて車に乗せて行きつけの病院に行ったんだが、七時過ぎてたし、電話にも誰も出ないし、携帯で他の病院探してここを見つけて電話したら運よく先生がいて、連れて来いって言ってもらって。タローってラッキーの兄弟、ここがかかりつけだって?」
「あ、ええ、まあ。昔、この近所に住んでたんで」
「しょっちゅう怪我だ何だって連れてくるが、血だらけになりながら走り回って躾がなってないって、先生が」
 郁磨は笑った。
「あいつはまあ、一度躾教室とか入れたけど、てんでダメで。一応、俺の言うことは聞くんだが」
「あれ、でもそういえば、確か、山本力くんじゃなかったかな、仔犬をくれた子の名前」
 改めて郁磨に問われ、力はうっと言葉に詰まる。
 まさかこんなところでこんな状況になるとは思ってもいなかったのだが。
「あ、いや、あの、わりぃ……、あの、ほんとは山本です。ってか、あの、俺、素行が悪いって評判らしいんで、ちょっと成績いい奴の名前をつい………」
 ぼそぼそと尻すぼみに言い訳する力を見て、郁磨は噴き出した。
「評判らしいって、面白い子だねぇ。すると柳沢が家庭教師やってる子ってのは」
「あ、そっちは本物の坂本です」

 


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