「あ、ええ。病院の先生が夜間だったのに手を尽くしてくださって、今日は元気そうな顔をしてて」
「河喜多先生だろ? 口は悪いが面倒見のいい先生で、うちのオーナーもずっとかかりつけ。まあ、後釜が力じゃ、この先どうなるかはわからないがな」
佑人はしばしその言葉の意味が呑み込めなかった。
「誰がそんなこと言ったよ!」
力がすかさず怒鳴りつける。
「だってよ、あそこの娘、獣医になったもんの、アメリカ行っちまったんだろ? お前、獣医んなってじいさんの後引き受けるんで、手伝いに行ってんだろうがよ」
「え………山本、獣医になるのか」
思わず力を見つめた佑人とまともに目が合うと、力の方が先に逸らした。
「なるっつって、簡単になれるもんじゃねぇだろ」
ぼそぼそと尻すぼみに口にしたかと思うと、力は立ち上がった。
「いいか、てめぇ、俺が獣医志望とか、軽々しく口にすんな! 坂本とか啓太や東にもだ、わかったか!」
ジャイアン口調で力は怒鳴りつける。
何だかそれは、いつか佑人に仔犬を押し付けて、「捨てたり、保健所やったりしたら、俺が承知しねぇからな!」と言い渡したあの時の力と何も変わらない気がして、佑人はつい笑みを浮かべそうになるのを堪えた。
「あ、あ、わかった」
「おい、練! あんたも軽々しく俺が獣医だとか何とか、べらべらしゃべんじゃねぇ!」
威張って怒鳴りつける力を練はクックックと笑う。
「なーにを恥ずかしがってんだか、このガキ大将が」
「るせぇんだよ! こい、タロー、散歩行くぞ!」
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