空は遠く199

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   ACT  20
 
 
 見上げると、冷たい風がひと吹きで汚れた空気を吹き払っていったように、空は晴れ渡り、いつも以上に遠い色をしていた。
 三月に入り、退院したラッキーは順調に快復しつつあった。
 授業が終わればすぐにでも飛んで帰りたい佑人だったが、たまに以前のように啓太や東山や坂本や、それに力と一緒にマックに寄って帰ることがあった。
 きっかけは坂本だ。
 上谷は悪びれもせず、あれからも佑人を誘いに来たが、その度ごとにまるで見張っていたかのように坂本が現れ、佑人の腕を掴んで学食だ図書館だと上谷の前から連れ去ってくれるのだ。
「……って坂本、約束なんかしてないぞ」
 その日も授業が終わるなり坂本は教室までやってきて佑人を玄関まで連れていくと、ようやく手を離した。
「いいだろ、別に。大体何で上谷とはデートして俺とはダメだってんだ?」
「デートって何だよ、それ……」
「まあまあ、たまにはいいじゃん、マックくらいつきあえよ」
「確か昨日も今日も昼は学食で一緒に食べただろう」
 パーティの夜、心配した俺が大騒ぎしたお蔭で、お前は上谷に何もされずにすんだんだぞ、と坂本本人から説明を受けたので、そうなのか、と佑人は邪険にもできないでいた。
「お前、学校は学校だろうが」
「まあ、少しならいいけど。ラッキーのとこに寄りたいし」
「ああ、ワンコ? 元気になった?」
「少しずつ」
「よかったじゃん」
 坂本の笑顔は大人びたクールな外見を少しばかり裏切っていた。
 よく知らないうちは、佑人も坂本のことを冷静な優等生と思っていたが、ここまでのことを思い返してみると結構熱い男のようだ。

 


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