空は遠く20

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    ACT  4
 
 成瀬一家は佑人が夏休みになるのを待って信州の山荘へ移動し、そこを拠点にして一馬と美月は仕事へ、郁磨は合宿だ研究だと出かけていった。
 一人佑人だけは山荘にいる間はずっとそこを動かず、郁磨の紹介してくれた家庭教師の柳沢とともに過ごした。
「柳沢は留学費用ためててさ。真面目で優秀だけど面白いヤツだからきっと気に入ると思うよ」
 佑人の性格上、塾や予備校には合わないだろうと、郁磨は見越していたのだろう。
 柳沢は郁磨の所属していたテニスサークルの後輩にあたり、法学部を卒業して司法試験にも合格しているのだが、国際弁護士として海外で仕事をしたいと、ロースクールへ留学する費用をためているらしい。
「彼女がニューヨークにいてさ」
 TOEFLを受けるつもりなので、佑人と英語で話せることが逆にありがたいという柳沢と一緒に勉強し、テニスで汗を流し、朝晩はラッキーとゆったり散歩をする。
 美月がいないときは、通いの家政婦がきて食事を作ってくれるのだが、たまに柳沢と二人で料理をするのも楽しかった。
 夏休みが終わりに近づく頃、東京に戻った佑人は今度は祖父の道場でみっちり扱かれた。
 何かに没頭していられるうちは、力のこともなるべく考えないでいられた。
 けれど、折に触れ、今頃力はどうしているのだろうと思いを馳せ、嫌な雰囲気で夏休みに突入してしまったから、もう以前のように一緒に行動するようなこともないかもしれないとも思う。
 佑人にはやがて始まる二学期が重苦しくもあり、だがやはり待ち遠しくもあった。
 二学期の始業式が終わる早々、教室で啓太と東山が盛り上がっていたのは、力の新しい彼女の話題だった。
「一女の女?」
「ミキティだぜ、一女の!」
「ウッソ…マジかよー」

 


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