空は遠く21

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 始業時間ぎりぎりになって、力が現れた。
 圧倒的な存在感。教室のざわめぎに一吹きの風が流れ込む。
 佑人の横を通り、力が斜め前の席にどっかりと座る。
 その背中に目をやって、佑人は何だかほっとする。
 まだ、同じ時を重ねられる――――。

 その噂があっという間に広がったのは、力の新しい相手というのが、近所にあるお嬢様校として知られる第一女子高校で評判の美少女、相田美紀だったからだ。
 近隣の男子高校生の間では、一女のミキティと呼ばれ、ちょっとしたアイドル的存在だ。
 下校時、たまたま佑人は校門をくぐったところで、髪の長い少女がたたずんでいるのに出くわした。
 都立南澤とは違う制服に気づいた佑人が少し歩いたところで振り返ると、ちょうど力がでてきて、少女が嬉しそうに駆け寄るのが見えたので、それが美紀だとわかった。
 仏頂面の力の鋭い目といきなりぶつかって、佑人はさり気なく視線をそらしてまた歩き出すのにかなりの努力を要した。
 第一女子高なら、特別成績がひどくない限り、系列の女子大やその短大、或いは専門学校にエスカレーターで進学できる。
 二流とはいえ受験校の枠に名を連ねている都立南澤の場合は、大半の生徒は三年ともなれば否が応でも受験生だ。
「まあ、俺には関係ない」
 佑人のひとりごとに傍らのラッキーがクウ、と返事をするように佑人を見上げる。
 しばらくは一緒にマックなんて、ないな。
 夜歩くのは好きだ。世の中の煩わしさから開放されて、自分とラッキーだけの時間がそこにある。
 真夜中一時を過ぎる頃には、この辺りの人通りはほとんどない。
 空を彩る星座も少しずつ夏から秋へと変わり始める。
 オリオン座が西の端に確認できた。
「へカー、ペテルギウス、ベラトリックス。ペテルギウスは赤色超巨星だ。でかくて明るいだろ。肉眼でも見える。だが、変光星だから冬が終わると暗くなる。質量が太陽の二〇倍もあるから、核融合起こしやすくて短命らしい。縮んでるんだ。いつ超新星爆発起こすかわからない。爆発の方向によっては地球の生命体に影響が出るかも知れないという説もある」
 いつだったか、マックで何かの話の延長で星座の話になった時のことだ。

 


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