確かにそうだ。
佑人は思う。
だが得てして大人は、子供だからとか軽く考えてしまいがちだが、小学生は小学生なりの、中学生は中学生なりの世界がある。
考え方で一年は長くも短くもなる。
渦中にいる者はそれだけで精いっぱいで、その外のことなど気づく余裕はないのだ。
坂本のように達観するとか、力のように我関せずで歩いているやつらにはわからないだろう。
「何かあったら、いつでも来いよ。あんまり考え過ぎないようにした方がいい」
半べその啓太に佑人は優しく微笑んだ。
「わーん、成瀬ぇ」
「あ、成瀬、俺も俺も、何かあったら行くからさ」
また佑人に抱きつく啓太の後ろから坂本が調子のいいことを言う。
「坂本はそんな必要ないだろう」
佑人がすっぱり言い切ると、「振られたな」と東山が突っ込む。
「冷たい視線くれてんなよ、俺たちの仲で。何にもなくても行っちゃうもんね、俺は」
あっけらかんと言う坂本は、精神的にタフで柔軟なのだろう。
佑人には羨ましい限りだ。
何だかな、と佑人は心の中でため息を吐く。
穏やかな青空の下、終わりかけた桜の花びらを乗せて春風が傍らを過ぎて行った。
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