空は遠く216

back  next  top  Novels


「うっせーんだよ。お前はあの内田とよろしくやってろよ。な、今度こそ、英語デートしようぜ、成瀬」
「そうだな、三年にもなったことだし週一でならいいよ」
 何だかやけくそのように佑人は頷いた。
「え、成瀬と坂本、マジでつきあうの?」
 啓太がぽかんと佑人を見つめた。
「バカ言え、お勉強だろ? 英語の」
 力が佑人の代わりに答える。
「ああ、英語のお勉強か」
 東山は勝手に納得する。
「英語デートだっつってるだろ? な、成瀬」
 そういえば、坂本もいつぞや佑人にキスを仕掛けてきたことがあった。上谷に触られたことは思い出しても気持ち悪くなるが、不思議と坂本のことは何とも思わない。
 だが、心が浮き立つようなことでもない。
 坂本の台詞は冗談なのか本気なのかわからないところがあるのだが、少なくとも上谷よりは人間的にわかりやすい。自分のことを露悪的に言うことが多いが、中身は案外いいやつだと最近は思う。
 男でも、力じゃなくて坂本のことを好きなら、ひょっとして問題ないのかもだけどな……。
 長い禁欲生活などという言葉は、力にあてはめると妙に生々しさを感じてしまう。
 あの夜、佑人は酔っていてうろ覚えでしかないのだが、しばらく寝かされていたのは力のベッドで、佑人さえいなければ玄関で出くわした若宮と力はあのベッドで寝ていたのだろう。
 佑人が力のことをどれだけ好きだとしても、若宮の代わりになれるわけではない。そんなことを考えて佑人は自分を嗤った。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ