空は遠く220

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「え? ケージに入れて連れていけるだろ?」
「それは小型犬だけだよ」
「え、じゃ、ラッキーってそんなでかいの?」
 そういえば、前にうちにきたのは坂本じゃなくて力だったんだと、佑人はあらためて思い出した。
「………タローくらい?」
「げ、タロークラスかよ? ってことは、車かぁ。俺、夏休みには免許取ろうと思ってるんだけどさ」
 驚きながらも、坂本はそれこそ余裕の発言をする。
「世の中の受験生が聞いたら、ふざけるなって言われない? それ」
 佑人はわざと眉をひそめる。
「最初からその予定でやってきたしな。ま、とにかく、車は何とかするから任せとけ。土曜日の朝、成瀬んちに迎えに行く。帰りは日曜の夜でも大丈夫だよな?」
「え、泊り? ってどこ行くんだ?」
「鵠沼。俺の実家。ガキの頃、親父が仕事の拠点虎の門に移したから、うちも引っ越したし、今はそっちが別荘状態。親は売ろうとしたんだけど、俺が嫌だってゴネたから、時々行って、掃除とかしろってさ」
 掴みどころのないヤツだと、坂本のことを思っていた佑人だが、そんな話を聞くと少しだけ坂本の片鱗に触れたような気がする。
 もっとも、なるべく人に見せないようにしている自分がそんなことを考えるのはおこがましいかも知れない。
「鵠沼か。うちの兄に聞いてみようか? 車出してもらえないか」
「ダメダメ、保護者同伴じゃ、オトモダチ合宿の意味がないだろ。ツテはあるから心配するなって」
 ご機嫌で佑人の分もトレーを重ねて返却すると、「じゃ、土曜日、朝八時な」とマックを出たところで坂本は念を押すように言った。

 


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