空は遠く222

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「へえ、ツーリングワゴンか、いいなぁ」
 郁磨はグレイの車体を興味深々で眺める。
「ダチが中古販売やってるんで、格安で手に入れたんですよ」
「いいな、今度紹介してくださいよ」
 昨年末郁磨が店を訪れて以来、練と郁磨は妙にウマがあったようだ。どうやら練は郁磨の鉄拳に惚れ込んでいるらしい。
「おはようございます。まあ、今日は佑くんのことよろしくお願いしますね」
 そこへバタバタと玄関から現れたのは美月だった。
「お、おはようございます」
 坂本と練は美女のいきなりな出現に一瞬目を点にする。
「ねえ、賢ちゃんまだ来ない?」
 いつにない地味なスーツの美月は伸び上って門の方を見た。
「え、みっちゃん今日、休みじゃなかったの?」
「それがね、お世話になった柿沼さんが入院されてるってさっき田辺さんから連絡あって」
 郁磨にそう説明をしているうちに、美月のマネージャー鳥居がレガシィの後ろに車を停めた。
「美月さん、すみません、遅くなりました!」
「こちらこそ、ごめんなさいね、お休みなのに。でもほら、柿沼さんには随分お世話になってるし」
 美月を乗せた車が走り去ると、茫然と見送っていた練が「美月って、もしや……」と口にする。
「練さん、そろそろ出ようぜ」
 何か言いかけた練を遮るように坂本が助手席のドアを開ける。
「あれ、成瀬、ワンコは?」
「うん。ラッキー! おいで」
 佑人は家の中に向かってラッキーを呼んだ。
 おとなしく呼ばれるのを今か今かと待っていたラッキーが喜んで飛び出してきた。
「うわ! もろ、タローじゃん!」
 坂本は目を丸くして佑人の傍らに寄り添うように座るラッキーを見つめた。

 


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