空は遠く225

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 佑人は持ってきたクールボックスからパイを取り出してテーブルに並べる。
「坂本、ナイフ貸して」
「おう、これでいいか?」
 紅茶の缶を片手に坂本はボードの引き出しからナイフを取り出した。
「ああ、ダメだダメだ、ポットやカップは温めておかないと」
 ボードから取り出したポットにすぐ茶葉を入れようとした坂本を見て、練は黙っていられなくなって立ち上がった。
「せっかくの渡辺美月のパイが台無しになるだろう、貸せ、俺がやる」
 やがて鈍いゴールドが品の良い味わいを醸し出すウェッジウッドのティーセットに香りのよい紅茶が入り、切り分けられたアップルパイとともにテーブルに並べられた。
「ヨーロッパが主な取引先だっけ? お前んちの親父さんの会社」
 美味い美味いと感涙ものでしばらくパイやお茶を堪能した練は、ようやく人心地ついたように言った。
「ああ、そうみたい」
 家自体もきれいに使い込まれ、ヨーロッパの調度品がゆったりと置かれた空間は居心地がよさそうだ。
「みたいってなぁ。しかし、ガキがこんな高級ティーセットでお茶会なんぞ、贅沢過ぎるぜ」
「しょうがないじゃん、これっきゃないんだから」
 ぶーたれる坂本は、常日頃のそれこそ年寄りじみて悟りきった雰囲気とはまた違って、子供っぽくみえる。
 自分の家だからかな。坂本、このうちが好きなんだな。
 佑人は思わず笑みをもらした。
「しっかし、えっらい量だな、バーベキューったって、たった二人でこんだけ食う気かよ?」
 クーラーボックスから取り出した大量の肉や野菜を冷蔵庫にしまう坂本と佑人を眺めながら練が呟いた。
学校の友達とこ泊りとか俺滅多にないから、母とか喜んじゃって、昨日兄と一緒に買い物行って、買い過ぎちゃったみたいで。練さん、仕事あるから一緒にって無理だよね」
 苦笑しながら佑人は練に言ってみた。

 


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