「え、えーーー、どっちなんだよぉ、成瀬ぇ」
啓太は典型的な末っ子気質なのだろう、簡単に人に甘えようとするところもからかわれやすい。
そんな啓太は可愛いし、甘えることが下手な佑人には羨ましくもある。
「何か起きても、考えるよか先に俺らは影も形もなくなってっから、お前の足りない脳みそを使うまでもないってこった」
「何だよぅ、それはよぅ」
坂本がまた茶化し半分ニヤニヤ笑うのに啓太はぶすくれる。
ふと顔を上げた佑人は、じっと力が自分を見つめているのに気づいた。
一瞬、まともに目が合った。
不思議なまなざしだった。
二人だけで宇宙の星星の間を浮遊しているような感覚にとらわれ、佑人は息をつくのも忘れていた。
「………な、成瀬」
ぐいと坂本に肩を引き寄せられ、我に返るまで。
あの、不可思議な瞬間が何だったのか。
ただ、唐突に互いの心に入り込んだような、そんな気がして。
もちろん、きっと錯覚なのだろうけど。
佑人は大きく息をついた。
空を見上げる。数えられないほどの星々へと思いを送る。
宇宙の中の数知れない星のひとつに生きている自分が、いかに小さいものかを思い知らされると同時に、星星の中に紛れてしまいたくなる瞬間でもある。
「行ってみたいよな、あの星の中に」
何億光年、気が遠くなるような時間を潜り抜けられたら。
「ちょっと寒くなってきたな。帰ろうか、ラッキー」
佑人が笑いかけるとラッキーはワンと応えて楽しげに尻尾を振った。
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