ACT 5
すっかり黄金色に変わってしまった校庭のメタセコイアの樹々が秋の深さを教えてくれる。
静かに時が流れていくのなら。
このまま何も変わらないでいてほしい。
教室の片隅で、ひっそりと、目立たず、苦にもされず。
佑人はひたすらそう願っていた。
ただ時折、その背中をみつめることだけ、許されるなら。
中間試験の真っ最中にも日直は回ってくる。
試験は午前中で終わり、とっくに明日の試験に備えて生徒はほとんど帰ったはずだ。
佑人が日誌を書いている横では、出席番号で佑人と日直が当たったクラスメイトがそわそわと英単語を暗記するのに懸命になっている。
「これ、先生に出しておくから、中山、帰っていいよ」
「いいのか? 悪い、じゃ、お先」
中山はとっとと教室を出て行った。
優等生の顔を見せたかったわけではない、一人の方が気楽なのだ。
しかも明日は英語と数学。どちらも佑人には何の問題もない。
ガタン!
職員室の担任のところへ日誌を持っていってから、ペンケースを忘れたのに気づいて二階の教室へと向かった佑人は、誰もいないはずの教室から物音を聞いた。
「足音しなかった? 今」
「誰もいやしねーよ、こんな試験の真っ最中」
この声、山本?!
「やぁね、教室なんかで」
甘ったるい女生徒の声に佑人は耳を疑った。
まさか………
くぐもった笑いに続いて、かすかに二人の動く音。
教室の後ろの入り口の戸が少し開いていて、佑人の意思とはおかまいなしに、二人の絡みが目に入る。
力が机の上に美紀を組み敷いているのが否応なく目に入り、佑人は思わず顔を逸らし、教室を離れた。
憤りと胸の痛みが同時に佑人を襲う。
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