空は遠く235

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「山本、内田さんが鵠沼の駅で待ってるって、電話あった」
 忘れたふりをして伝えないでまた力と諍いになるのは嫌だったから、きちんとそう告げた佑人だが、「何であいつがお前にかけてくるんだよ」とやっぱり力に睨みつけられる。
 釣ったサカナにエサはやらなくても、横取りされるのは気に入らないということか。
「内田が勝手に成瀬んちまで電話して、お前の居所突き止めたんだよ。成瀬に文句言うのはお門違いだぜ? 自分の女のタズナぐらいしっかり握ってろよ。そもそもこっちが面白そうだからって女と約束でもあったのをドタキャンしたんだろ、どうせ」
 諍いは嫌だが、言い返さずにはいられないと佑人が口を開く前に、坂本が突っかかる。
 今度は坂本に思い切りムカついているという顔を向けた力だが、どうやら図星だったのだろう。
「夜、女一人、あんなちっせえ駅で待たせんなよ」
 重い腰を上げてリビングのドアに向かう力を坂本の揶揄が追いかける。
 振り返ってジロリと一瞥すると、力は玄関を出て行った。
 リビングの真ん中にある大きな柱時計が九時を告げた。力が出て行ってから二時間ほど経っていた。
「女はすぐのぼせちまうみてぇだぜ? てんで身勝手な男なのにな」
 思い出したように口にした坂本に、東山が数学の問題集から顔を上げた。
「もう力のアレなしじゃ、生きられないの! ってか?」
 坂本はニヤニヤと身もだえしてみせる。
「キショーめ、俺なんかずっとご無沙汰だってのによ!」
「T大のおねーさまはその後どうなったんだよ」
 東山が突っ込みを入れる。

 


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