空は遠く241

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 さすがにリビングは真っ暗で灯りを探そうと恐る恐る歩いていた佑人は、何かに足がぶつかって前のめりに転びそうになった。
「わ!!」
「おい!!」
 辛うじて転ばずに抱きかかえられた、と思った次の瞬間、二人とも絨毯の上に転がっていた。
 頭の後ろに大きな手があった。
 おそらく転んだ拍子に何かにぶつけたりしないように庇ってくれたのだ。
 いや、それより今のこの状況に佑人の心臓は飛び上がらんばかりに跳ねた。
 転ばないように抱えたためにバランスを崩し、絨毯の上に佑人を押し付けるようにして力の身体が覆いかぶさっていた。
 出がけに坂本がカギを渡していたから帰ってきていたのだろう、声で力だとは分かったが、予想だにしない出来事に佑人は息をのむ。
 え……な……に…?
 佑人の顔に力の吐息がかかる距離。
 しかも驚いた佑人の目を覗き込むようにして力の目があった。
 身じろぎできないでいる佑人はその時ふいに石鹸の匂いに気づいた。
 しかもみんなが使ったボディソープではないと悟った途端、石鹸の匂いに混じって男の性的な匂いを嗅ぎ取った佑人が慌てて身体を起こすまで、おそらくわずか何秒かのことだったろう。
「……びっくりした、帰ってるんなら上に来ればよかったのに」
 少し闇に慣れた目で灯りを探してつけた佑人は、転がった拍子にテーブルの下に脱げたスリッパを見つけて履くと、キッチンに向かう。
「……フ…ン、そりゃこっちの台詞。灯りくらいつけて動けよな」
 なるべく平静を装いながら冷蔵庫からポカリとノンアル缶を取り出すのだが、まだ佑人の足はガクガクと震えている。

 


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