それよりも動悸がなかなかおさまらない。
何だったんだ?
「あ、ポカリとか、飲む?」
震えを抑えて一応聞いてみるが、「俺はいい」と素っ気ない返事が返ってきた。
力はまたソファにゴロリと横になったが、結構大きなソファにもかかわらずおさまりきらない長い足にさっきはけつまづいたらしい。
「じゃ、おやすみ」
声をかけると、佑人は逃げるように階段を駆け上がる。
ドアの前で息を整えようとするのだが、またぞろさっき力に抑え込まれたその腕の感触が蘇り、カッと佑人の中で血液が逆流する。
明らかに女とヤッてきた後だというその腕に抱きこまれたというのに、佑人の頭の中でまるで火花でも散るように現れては消える思いもよらない感情に混乱していた。
力を好きだという思いがあっても、力の女たちのように力とどうこうなんて関係ない、のだと、たったさっき考えていたはずなのに。
ラブアフェアの後の生々しささえ残る男のそんな腕にもっと触れられたいと、触れていたいと、抱きしめたいと抱きしめられたいと、そんな感情が己の中にあるなんて。
力に対する思いを否定するつもりはなかった。
けれど、こんな身体の奥から湧き上がるような感情は、まるで知らない。
ダメだ。
ダメだ、こんなの!
とにかく、こんなことを少しでも考えているなんて、絶対に力に知られるわけにはいかない。
これだけ毛嫌いされている上、キモいとか思われるくらいなら、ほんとこの世から自分を消し去った方がマシ。
ああ、もう、頭の中がパニックしたまんま。
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