「おい! 待てよ!」
木戸に手をかけようとして、佑人はぐいと力任せに振り向かされた。
「何で、いっつもそうなんだよ!」
憤りのままに力は佑人を木戸に押しつけ、佑人の顔を覗きこむが、チッと舌打ちして、一つ大きく息をつく。
「……内田のこと好きなのかよ!」
唐突な力の言葉に佑人は面食らう。
「誰がそんなこと言ったよ!」
こいつは何もわかっちゃいない!
「内田はお前が好きだから、俺に近づいた振りをしてお前に振り向いてほしかったんだ! さっきはそれを俺に謝ってきただけだ!」
お前の心に届かないって。
「そのくらいわかってやれよ!」
内田のことを弁明しているようで、その思いは自分の心の内を口にしている気がした。
「もともと、近づいてきたのはあいつで、ちょっとつき合ってみただけだ」
やっぱり、こういうやつなんだ。
「よく平気でそんなことが言えるよな。ほんとに……人の心とかどうでもいいんだな」
八つ当たり気味だとはわかっていながら、佑人は口にした。
「そうかよ、お前は好きでもないやつに可哀想だからって心にもないこというわけだ?」
キッと佑人は力を睨みつける。
「少しくらい思いやってもいいんじゃないかって言ってるだけだ」
笑えてくる。
どうしたって俺ら、水と油、言葉さえ届くことはない。
「もう、いいから、帰ってくれ………」
佑人はまだ自分の肩を押さえつけている力の腕を押し戻して逃れようとした。
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