空は遠く262

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「明らかな事実だから納得せざるを得ないだろうが」
 さらにショートホームルームが終わるとともに、内田が力の席に駆け寄った。
「ちょっと、成瀬くん、まさか昨日の………」
「黙れ! 風邪だっつっただろうが!」
 イライラと力は内田の言葉を遮った。
 一瞬、周りの目が二人を振り返ったが、内田もさすがに教室内で昨日のことを持ち出すのはまずいと悟ったのだろう、口を噤んで席に戻った。
「え、成瀬、休み? 珍しいな」
 昼には坂本がやってきて、能天気そうに笑いながら力の腕を掴んで廊下に連れ出した。
「風邪って、おい、昨日の怪我、ひどかったんじゃないだろうな?」
「ちっ! てめぇに睨まれるような筋合いはねぇ」
 声を潜めて詰め寄る坂本に、力は舌打ちした。
 昨夜、坂本が携帯にかけてきて、佑人のことを根掘り葉掘り聞くので、佑人が腕をナイフで切りつけられたから病院に連れて行ったと話したのだが、何度携帯にかけても佑人も力も出なかったから気が気じゃなかったと散々文句を並べたてた。
「雨に濡れたし、熱でも出たんじゃねぇのか?」
「うーん、見舞いに行ってみるか……」
 本気で行きそうな気配に、「やめろ、寝込んでるとこ行ってどうすんだ!」と力は言い放つ。
 江西学院の男が落としていったナイフは、男たちが逃げて力が佑人を連れて病院に向かった頃、その場に駆けつけた坂本が見つけてハンカチにくるんで持ち帰った。
「証拠物件は俺が持ってるからな。何かあったら使えるだろう」
「大事に仕舞っとけよ」
 勘のいい東山も、昨日何かあったのか、と力に聞いてくる。

 


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