空は遠く263

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 嘘も言えないので、東山には、内田と佑人が襲われて、内田は逃げて無事だったが、ナイフで切り付けられた佑人を病院に連れて行ったことをかいつまんで話した。
「ああ、じいさん先生んとこか」
「じじい、ぎっくり腰で、今、息子がやってんだ」
「へえ。たいした怪我じゃなきゃ、やっぱ昨日雨に濡れて風邪引いたんだな、珍しいよな、あいつあんまし休まねぇから」
 朝からそんな具合で、とにかく力はイラついていた。
 佑人のことだから、半袖だと包帯が見えてしまうのを気にして、怪我のせいでというのもあるかもしれない。
 昨日ずぶ濡れだったから風邪ということも無論ありうるだろう。
 ありうるとは思うのだが、その実、佑人が欠席した理由は別にある気がするのだった。
 すなわち、昨日、力がしでかしてしまった一件のせいで。
 とにかくしでかした当の力本人ですら、一瞬、自分の頭が真っ白になり、我に返ってからは、そんな暴挙に出てしまったことを悔やんだが、時既に遅しだ。
 当の本人がそうなのだから、しでかされた佑人にしてみれば、何が何だかわからなかっただろう。
 くっそ! あんなとこであんなことするつもりはなかったんだ。
 けど、ヤツがあんな目で見るから、つい身体が勝手に動いちまって!
 ああ、くっそお!
 考えれば考えるほど、思わず頭を掻き毟りたいところだったが、新垣の剣のある視線に出くわして、力はらしくもない溜息をついた。
 だが、力が自分の甘さを痛感したのは翌日、また佑人が欠席と知った時だった。
 雨模様の一日を悶々とうわの空で過ごし、自分の部屋に帰ってタローを連れて、カフェリリィに出向いたものの、心の中のモヤモヤは一向に晴れることはなかった。
「何だ、風邪でも引いたのか? お前が静かだと気味が悪い」
「うっせぇよ!」

 


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