空は遠く267

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「姉貴のこと知ってるのか? ああ、そういや木村さんが力ちゃんなんて呼んでたな、ガキの頃からここに来てたんだっけ、力ちゃん」
「うっせぇよ、俺ぁ、幼稚園児じゃねぇ」
「佑人のことも、木村さん、佑人ちゃんとか呼んでたが、お前ら、幼馴染とかいうやつ?」
 ニヤニヤと笑う宗田を睨みつけたのは、茶化されたからというわけではない、佑人などと親しそうに呼び捨てにしたからだ。
「……そんなんじゃねぇよ」
「姉貴は今、大学の医局にいるが、じき、アメリカ留学するみてぇでさ。オヤジが俺のおふくろと浮気して俺ができちまったもんだから、離婚はしたけど、姉貴は時々帰ってきてたみたいだぜ。俺のおふくろは身体が弱かったから、俺の中学ん時に死んで、俺はずっと寮生活してたから大学に入った頃、姉貴と会ったんだが、さばけた人でさ、反抗的だった俺は自分がアホみてぇに思えたな」
 宗田はふっと笑い、「てなことはどうでもいいが、何だ、俺に何か言いたいことでもあるのか?」
「ねぇよ」
 否定はしてみたものの、気になっていることがあるのは確かだった。
「そういや、佑人はアメリカに何年かいたらしいな。俺も大学卒業してからずっとアメリカ長かったから、さっきはえらく話があってよ」
 ヘラヘラと笑う男は、まさに力の気にしている根源に触れてくる。
 佑人があんな風に誰かと楽しげに話しているのを、力は聞いたことがなかった。
 まあ、嫌っているヤツの前で笑顔なんかみせやしねぇか。
「しっかし、あんだけの美形、なかなかいねえな。金髪ヤロウばっか見てきたが、やっぱ日本人だよな。しかも鍛えられてっから、たたずまいが凛としてて、何かこう、現代の森蘭丸ってぇな風情だよな、客ってこと忘れて、うっかり食らいつきそうになっちまった」
 頭をガシガシ掻きながら宗田はガハハと笑う。

 


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